2012,07,06, Friday
このエントリは7月6日の日記です。後日正しい日付に移動いたします。
昨年に引き続き、東京国際ブックフェアに行ってきました。 今年の東京国際ブックフェアは、電子書籍を中心に扱う「電子書籍EXPO」、作家やイラストレーター/デザイナーなどの個人がプレゼンする「クリエーターズEXPO」、アニメやキャラクターなどの著作権二次利用の商談会(こんな紹介が適切かどうかわかりませんが)の「ライセンシングジャパン」が併催されていて、上画像の奥にあるエスカレーター上、二階部分まで借り切った大規模なイベントになっています。画像に看板が映っていない「電子書籍EXPO」が二階で開催されていました。 なお今回は日程の都合上会場に居られたのは四時間程度。興味のあるところを集中的に回ったので、見逃しがあるかもしれないことをあらかじめお断りしておきます。 私がこのイベントを見に来る最大の目的は、電子書籍の最新情報を仕入れることです。大学の講義で教えている(特に今年からは『デジタルメディア論』という講義も担当することになった)こともあり、ここ数年激動が続く電子書籍に関しては最新情報と数年先の予測が不可欠になりました。 今年の事前の話題としてはなんといっても楽天のkoboの動きでしょう。 e-インク使用のkobo端末自体はアメリカで実績のあるものらしいので、それがEPUB3に対応するのを待っての楽天の動きなのだろうと思い、実機を触ってきました。 表示部分の大きさが文庫本程度。e-インクなのでモノクロですが読みやすく、マンガの表示にも問題ありません。タッチパネルの操作性がiPadと違うためにとまどうことが多かったですが、これは慣れで解消するでしょう。 ページの切り替えが、遅くはないのですが、表示が乱れるのが案外気になりました。ページめくりのアニメーションはなくてもいいですが、それならそれでもっとスパッと切り替わるようにならないものか、と。 あとこれは個人的な好みの問題ですが、端末の裏面(画面じゃない方)のデザインというか造形というかが激しくダサくて、このままではちょっと買う気にはなれませんでした。 楽天の展示は『ブックフェア』のエリア内だったので、その後二階の電子書籍EXPOに行ったのですが、ここは昨年から大きな流れの変化はありませんでした。未だに日本語に対応したまともなブラウザがないEPUB3の普及を待ちつつ準備している感じで。 目立ったのは「レイアウト固定のEPUB3形式」を売りにしていたところが複数あったこと。レイアウト固定であればpdfという優秀なファイル形式があるのに、なぜわざわざEPUB3なのか、という問いには「国際標準のオープンな規格ですから」という答えでした。今思えばここで「よりインタラクティブにできるから」という回答でなかったのは、オーサリングツールがそこまで想定していないからかな? というのは意地悪な見方でしょうか。 「html5を使った電子カタログ製作」とか「オーサリングツール」とかを謳っているところも複数ありました。 相変わらず、「iPadなどに独自のアプリをインストールして、電子書籍をダウンロード」という形式が多くて辟易。DRMとかいろいろあるんでしょうが、読者はいったい幾つの「電子書籍アプリ」をインストールしなければいけないんでしょうか? そして、「あの本はどのアプリに入ってたっけ?」といちいち探さなきゃいけないなんて、不便だと思わないんでしょうか? ということで、そんななか少し目新しいところが二つ。 まず専門書・実用書の電子書店 BOOK PUBというところ。 出版社直営の電子書籍サイトで会員制。有料の書籍データもあります。PDFあるいはEPUB3形式というのも現実的。なによりもここは「最低限のDRM」を指向しているというのがいいです。読者にはダウンロードした人が特定できるデータを埋め込んだ電子書籍データが渡され、個人使用に関してはいくらでもコピーすることが可能です。読者にとって使いやすいシステムを構築するにはいい考え方ですね。 もう一つは、bookpicというサイト。 ここは「電子書籍サイト」というのとは少しイメージが違います。webブラウザ上で読む電子書籍ですが、ページにコメントを貼り付けることができます。twitterやfacebookとの連携もできて、「電子書籍ならでは」というか「webページとの垣根を崩す」感じのサイトになっています。新しい試みとして面白いと思いました。 しかし総じてすごく新しい発表はなく、秋のamazon参入に向けて様子見をしているのかなあ、という印象はありました。 出展してなかったとおもいますが、最近参集出版社が増えつつある角川のBookWalkerとamazon/kindleの一騎打ちに、楽天koboがどこまで食い下がれるのかなあ……というのが、たぶん今年から来年前半にかけての電子書籍界の注目ということになるのでしょうか。
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| お仕事(小説/SF) | 11:38 PM | comments (0) | trackback (x) | |
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